京都地方裁判所 昭和60年(わ)977号 判決 1986年1月13日
本籍・住居
京都府宇治市廣野町西裏六番地
会社役員
上田幸弘
昭和一四年一月一五日生
右の者に対する相続税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官須藤政夫出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年及び罰金八〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となる事実)
被告人は、奥村典子、奥村文浩、戸山孝、全日本同和会京都府・市連合会会長鈴木元動丸、同連合会事務局長長谷部純夫及び同連合会事務局次長渡守秀治らと共謀の上、右典子の実父で右文浩の養父である奥村博司が昭和五九年四月二八日死亡したことに基づく右典子及び右文浩の各相続財産にかかる相続税を免れることを企て、右典子の相続財産にかかる実際の課税価額が一億九五六二万九三四三円で、これに対する相続税額は七四一九万八四〇〇円であり、右文浩の相続財産にかかる実際の課税価額が一億六六八七万二八四九円で、これに対する相続税額は六二九九万八六〇〇円であるにもかかわらず、被相続人の右奥村博司が有限会社同和産業(代表取締役鈴木元動丸)から二億九六五〇万円の債務を負担しており、右典子においてそのうちの一億五九〇〇万円を、右文浩において同じく一億三七五〇万円をそれぞれ承継したと仮装するなどの行為により、同年一〇月二九日、京都府宇治市大久保町井ノ尻六〇番地の三所在所轄宇治税務署において、同署長に対し、右典子の相続財産にかかる課税価額が三六六二万九三四三円で、これに対する相続税額は三九八万四七〇〇円であり、右文浩の相続財産にかかる課税価額が三〇二七万八三四九円で、これに対する相続税額は三三三万四二〇〇円である旨の虚偽の相続税の申告書を提出し、もって不正の行為により右各相続にかかる右典子の正規の相続税額七四一九万八四〇〇円との差額七〇二一万三七〇〇円を、右文浩の正規の相続税額六二九九万八六〇〇円との差額五九六六万四四〇〇円をそれぞれ免れたものである。
(証拠の標目)
一 被告人の検察官に対する昭和六〇年八月二〇日付、同月二二日付、同月二三日付、同月二四日付及び同月二七日付各供述調書
一 奥村典子(二通)、奥村文浩(二通)、戸山孝(三通)、青山健造(二通)、渡守秀治(二通)、岩崎義彦(三通)及び長谷部純夫(一通)の検察官に対する各供述調書謄本
一 中川敏夫(謄本)、藤井孝三、小川弘、井上清、堂本伝、河本勝次(謄本)及び山本晃男(謄本)の検察官に対する各供述調書
一 大蔵事務官各作成の脱税額計算書(謄本)、証明書及び報告書(謄本)
一 城陽市長作成の戸籍謄本
(法令の適用)
一 罰条 各相続税法六八条一項、刑法六〇条、六五条一項
一 科刑上一罪 刑法五四条一項前段、一〇条(重いと認める相続人奥村典子に関わる相続税の逋脱の罪の刑で処断。罰金刑併科)
一 労役場の留置 刑法一八条
一 懲役刑の執行猶予 刑法二五条一項
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 萩原昌三郎)